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almost no memory

漫画、ミステリー小説、ハロプロ、海外ドラマが好き。外出は本屋とIMAXシアターとハロ現場。

天才は何人もいる『蜜蜂と遠雷』

小説 読書

蜜蜂と遠雷

蜜蜂と遠雷

音楽と才能の話が大好きでこれまでそういった漫画はたくさん読んできた。小説でもそのテーマの話があると聞き、発売以来評判も聞いてたこともあって、ワクワクして読み始めた。
そして期待通りでめちゃくちゃめっちゃくちゃ面白かった。
才能の話を書くなら、天才と語り部たる凡人が必要なのかと思ってたが、違った。これは天才と努力家の対比のようなお話ではなかった。一人の天才が圧倒していく話ではない。
嫌味がなくてまっすぐひたむきな天才たちの話。天才たちは誰もこのコンサート中に挫折も対立もしない。
そういう方面のドラマチックな演出をしようと思えばいくらでもできるだろうに、そんなものは一切なくて、彼らの音楽を描きだし表現することで、コンクールそのものがそれだけでいかにエンターテイメントかを見せてくれた。
そして、音楽を言葉に落とし込んだ恩田陸のすごさ。きっと耳の肥えてない私がその音楽を聴くよりも恩田陸がつむいだ言葉を読む方がよっぽど曲を理解できてるだろう。恩田陸、すごい。
そして、圧倒的に異質な塵という少年の「ギフト」素晴らしかった。
ただ個人的に涙がこぼれたのは明石が菱沼賞をもらう電話をうけたところ。
私の心まであらわれるような豊かな気持ちになり、この次にどんな本を読んでいいか分からない。

「作者自身、本当に最後まで順位を決められず、正直、もう誰が優勝でもいいんじゃないかと(笑)。最後の最後に結果は決めましたけど、ああ、私が書きたかったのは、同じステージに立つ演奏家たちが互いにインスパイアされて、どんどん成長する、そこが書きたかったんだと気付きました。そういう意味では、書き尽くしたと思います」

恩田陸のインタビューにある通り本当に誠実に誠実に「同じステージに立つ演奏家たちが互いにインスパイアされて、どんどん成長する」物語があった。小説的な技巧はあくまでも音楽表現に、誰かをあえて書かずに想像させるみたいなものはなくてシンプルに予選から本選まで全員を丁寧に。